神経内科について

このページは患者の皆さまやご家族の皆さまから寄せられた素朴な疑問・質問をベースに、神経内科についてできるだけわかりやすい言葉で紹介しています。
それでは、神経内科について解説していきます。

 

「神経内科」という診療科が誕生した経緯について

神経内科は、英語でNeurologyという用語を九州大学で昭和39年に日本で初めて神経内科の教授になられた黒岩義五郎先生が和訳された言葉です。Neurologyの前半のNeuroという部分はNeuronすなわち神経あるいは神経細胞という言葉で、残りのlogyは学問という意味です。すなわち直訳すれば神経学という言葉になり、本来は神経科と訳した方が正確だったのかもしれません。しかし日本では新しい学問であったNeurologyに対してその当時からすでに多くの大学に講座があった精神科が、ところによっては既に神経科あるいは神経精神科と名乗っておりました。ちなみに精神科に相当する英語はPsychologyなのですが、精神科では不安神経症であるノイローゼもあつかっていたことから神経科を名乗ったものと思われます。そこでこの2つの科の混乱を避けるべく黒岩先生は、神経内科と名付けられたと聞いております。

神経内科と間違われやすい科との違いは?

従いまして、神経内科は脳や脊髄にある神経細胞の病気をあつかう科ということになります。すなわち神経内科では、患者さんの手足の痛みや脱力、言語障害、複視など神経の障害に起因した症状について、神経系の病変の局在と性質を科学的・論理的に分析して診断を下し、治療してゆく内科系の診療科です

これに対して一般の人によく間違われやすい精神科(あるいは神経科、神経精神科や精神神経科)は、ものの考え方や感じ方などに変調をきたした患者さんの症状や所見を観念論的に理解して診断し、治療してゆく科です。そしてまた最近ではより新しい診療科として心療内科という科も耳にします。これは「病は気から」という言葉がありますが、例えば胃潰瘍や高血圧は精神的ストレスで発症することがあり、また逆に胃潰瘍や高血圧により精神的にストレスがかかってしまうという悪循環をきたし、いずれか一方だけを治療しようとしてもうまくいかない場合、心と体、すなわち心身両面から治療していこうという内科系の科をいいます。

このようによく似た言葉がいろいろあって紛らわしいのですが、要するに神経内科は、簡単に言えば脳神経外科の内科版(本当は少し違いますが)と言えば一般の患者さんに分かっていただきやすいかと思います。そして内科は勿論のこと小児科、脳神経外科、整形外科、精神神経科それに心療内科などとも連携して診療しております。

伊月病院の神経内科で取り扱う疾患は?

当院の神経内科では、パーキンソン関連疾患、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症筋委縮性側索硬化症、多発性硬化症、アルツハイマー病などの神経難病を中心に脳血管障害から偏頭痛にいたるまで神経内科領域の多くの疾患を幅広く総合的に診療しております。


■脳血管障害

まず、脳血管障害ですが、これは脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、それに一過性脳虚血発作などが含まれます。脳血管障害といえば従来から脳神経外科の病気というイメージが強いようですが、外科的処置を要する脳出血やくも膜下出血などを除き、保存的な治療で済む脳梗塞などは、始めから神経内科がみて治療するのが一般的です。実際、脳血管障害を集中的に診療するストロークケアユニットがある徳島大学でも同ユニットは脳神経外科と神経内科によって構成されています。

■神経変性

近年予想以上に増加していることが分かり、社会的に問題となっているアルツハイマー病を始め、比較的頻度の高いパーキンソン病やその他、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、といった疾患が属します。このうちパーキンソン病は1,000人に1人の割合で発症し、毛沢東、ヨハネ・パウロ二世、モハメド・アリ、三浦綾子、岡本太郎などの著名人が罹患したことで知られていますが、きちんと診断されていないことも多い由です。例えばパーキンソン病の症状である手のふるえを「単なるふるえ(本態性振戦)」として放置されていることもよくあるとのことでした。また、物の臭いがわからなくなることも、パーキンソン病を疑う大事な徴候であり、見過ごされていることがよくあると教えてくれました。皆さんの中にもこのような症状の方はいないでしょうか。

■自己免疫性神経疾患

さらに、多発性硬化症、重症筋無力症、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経炎など自己免疫性神経疾患に属するグループがあります。これらの特徴は、数は少ないのですが、治りにくく社会問題として取り上げられることも多く、また他の診療科がほとんどあつかっていないという特徴もあります。

■その他の疾患

それから次に数の多い疾患としては緊張性頭痛片頭痛といった各種頭痛やめまいなどもみております。さらに脳髄膜炎、脊髄症、末梢神経疾患、筋疾患などに加え、精神科などとの境界領域としててんかん、軽度のうつ病、心身症なども対象としております。その他、脳梗塞や脳出血など、脳卒中後の症状への対応です。会話が不自由になる失語症では言語訓練を積極的に行っております。

どのような症状が見られますか?

上記にあげた疾患の背後には、何らかの体の異変が見られます。たとえば、次に挙げる症状が1項目でもあり、それが2、3日から1週間程度続くようであれば、いつも違うと思って、早めに神経内科を受診してください。
・頭痛
・めまい
・しびれ
・手足のふるえ
・ものわすれ
・かってに手足や体が動いてしまう
・うまく力がはいらない
・歩きにくい、歩くとふらつく、つっぱる
・むせ
・しゃべりにくい、ろれつがまわらない
・ひきつけ、けいれん、てんかん
・ものが二重に見える 、目がかすむ
・意識障害

神経内科は、あつかう疾患が多種多様であり守備範囲の広いのが特徴の1つです。また、どうせ分からないからと諦めている方にはぜひとも受診していただきたい科であると、お勧めいたします。

このように、当院では対象とする疾患が数多く、急性期から慢性期に至るまで多岐にわたっています。さらに慢性進行性の疾患も多く、その経過が長期にわたり色々な症状を伴うことが多くなります。このため、神経内科を中心に一般内科を含めて、入院から在宅にいたるまで幅広く全人的な診療をおこなっております。

■受診をご希望の方はこちら→【診療案内】神経内科へリンク

伊月病院神経内科の歩み

1999年(平成11年) 10月 標榜診療科目に神経内科を追加
管理者変更 現院長 西田善彦就任
2000年(平成12年) 10月 徳島県難病医療ネットワーク協力病院
2001年(平成13年) 4月 日本神経学会認定教育関連施設
2004年(平成16年) 4月 臨床研修協力病院
2006年(平成18年) 11月 徳島治験ネットワーク登録医療施設
2013年(平成25年) 4月 日本神経学会認定准教育施設

ページの上部へ